ガジェット評論家兼コラムニストの二階堂仁です。今回も多く寄せられてる質問にお答えしていきます。
この記事を読んでいる方は、最近話題の「iPhone Air」が、噂されている折りたたみ式の「iPhone Fold」の伏線ではないかという考察が気になっていると思います。私も長年アップル製品を追いかけていますが、今回の新モデルの登場には、単なる薄型化以上の壮大な意図を感じずにはいられません。その戦略的な動きには、正直なところ興奮を隠せません。

この記事を読み終える頃には、なぜiPhone Airが未来のiPhoneへの布石と言えるのか、その深い理由についての疑問が解決しているはずです。
記事のポイント
- 既存ラインナップから浮いた「Air」のネーミングに隠された意図
- 極限の薄さとMagSafe両立で実現する未来のデバイス設計
- 薄型化の課題を克服するバッテリー技術とApple Siliconの進化
- 完全ワイヤレス化の鍵を握る新チップ「N1」の戦略的重要性

iPhone AirがiPhone Foldへの壮大な伏線である5つの根拠
Appleの新製品発表は、常に私たちを驚かせてくれます。しかし、今回発表された「iPhone Air」は、そのネーミング、デザイン、そして搭載された技術のすべてが、まるで数年後の未来、すなわち「iPhone Fold」の登場を予感させる壮大な予告編のように感じられます。
ここでは、iPhone Airが単なる薄型モデルではなく、折りたたみ式iPhoneへの重要なステップであると考えられる5つの根拠を、深く掘り下げて考察していきましょう。

引用 : Apple HP
1. 異質感を放つ「Air」のネーミング戦略
まず最も不可解であり、それゆえに最も意図的だと考えられるのが「Air」という名前です。思い出してみてください。これまでiPhoneには「mini」や「Plus」、「Pro」、「Pro Max」といった、サイズや性能を示す明確なサブネームが与えられてきました。これらは毎年、世代番号と共にアップデートされるのが常でした(例: iPhone 13 mini、iPhone 14 Plus)。
しかし、今回の「iPhone Air」は違います。「iPhone 17 Air」とはならず、単に「iPhone Air」として登場しました。これは、既存のナンバリングシリーズとは一線を画す、特別なポジションにあることを示唆しています。
過去の「Air」が示してきた道
Appleの歴史において、「Air」の名を冠した製品は、常に技術的なブレークスルーや、新しい製品カテゴリの幕開けを象徴してきました。
- MacBook Air (2008年): 当時、封筒から取り出すパフォーマンスで世界を驚かせた初代MacBook Airは、「薄くて軽いノートPC」という新しい市場を切り開きました。それは単に薄いだけでなく、ユニボディ構造など、その後のノートPCの設計思想に多大な影響を与えました。
- iPad Air (2013年): 初代iPad Airは、それまでのiPadから大幅に薄く、軽くなりました。これにより、タブレットの携帯性が劇的に向上し、より多くのユーザーにとって身近な存在となりました。
これらの歴史を鑑みれば、「iPhone Air」もまた、一時的なモデルではなく、iPhoneの未来を大きく変えるための試金石、あるいは過渡期のモデルと捉えるのが自然です。来年以降、毎年アップデートされるのではなく、数年間このモデルが市場に存在し続け、ユーザーの反応や技術の成熟度を見極めた上で、そのコンセプトが「iPhone Fold」へと昇華されていく。そんなシナリオが濃厚だと考えられます。
2. 極薄設計とMagSafeの両立が示す未来
iPhone Airの最も顕著な特徴は、その驚異的な薄さです。しかし、ただ薄いだけではありません。Appleは、この極薄の筐体に「MagSafe」を搭載してきたのです。これが非常に重要なポイントです。
MagSafeは、磁石を利用したワイヤレス充電およびアクセサリー装着システムです。内部には充電コイルや磁石を配置するためのスペースが必要で、薄型化とは相反する要素です。この技術的課題を克服し、Apple史上最も薄いiPhoneにMagSafeを搭載したということは、将来のデバイス設計に向けた明確なメッセージと受け取れます。
なぜ薄型とMagSafeの両立が重要なのか
折りたたみデバイスであるiPhone Foldを想像してみてください。その最大の魅力は、開けば大画面、閉じればコンパクトという両立にあります。この「コンパクトさ」を実現するためには、デバイスの厚みを極限まで抑える必要があります。
特に、二つ折りにした際の厚みは、ユーザー体験を大きく左右します。もしiPhone Foldが、現在のiPhoneを2枚重ねたような分厚さであれば、多くのユーザーは魅力を感じないでしょう。
そこで、iPhone Airの存在が意味を持ちます。このモデルで「極薄の筐体でも、安定したワイヤレス充電とアクセサリーエコシステムを構築できる」という技術的な証明を行ったのです。これは、iPhone Foldの片面の筐体をiPhone Airと同等、あるいはそれ以上に薄く設計するためのデータ収集と技術実証のフェーズである可能性が極めて高いと言えます。
3. 薄さと裏腹のバッテリー性能という矛盾の克服
薄型化における最大の壁は、常にバッテリーでした。物理的なスペースが小さくなれば、搭載できるバッテリーの容量も小さくなり、駆動時間が短くなる。これはスマートフォンにおける長年の課題です。
しかし、AppleはiPhone Airにおいて、その薄さからは想像しにくいほどのバッテリー性能を維持しているとアピールしています。これを可能にしているのが、独自設計半導体「Apple Silicon」の圧倒的な電力効率です。
Apple Siliconの進化が支える未来
iPhoneに搭載されているAシリーズチップは、年々パフォーマンスを向上させながら、同時にエネルギー効率も劇的に改善させてきました。少ない電力で高い性能を発揮できるため、バッテリー容量の物理的な制約をある程度カバーできるのです。
さらに、今回の発表で注目されたのが、後述する新しいワイヤレスネットワークチップ「N1」や、情報ソースで示唆されている「C1」系のチップです。これらはメインプロセッサだけでなく、通信などを司る周辺チップに至るまで、Appleが自社設計に切り替え、徹底的な省電力化を進めている証拠です。
この「パフォーマンスを犠牲にせず、バッテリー持ちも妥協しない薄型化」の技術は、iPhone Foldにとって必須条件です。折りたたみ構造は内部スペースがさらに複雑になり、バッテリー搭載の難易度は格段に上がります。iPhone Airで培われた省電力設計のノウハウは、そのまま未来の折りたたみデバイスの心臓部に応用されることになるでしょう。
4. ポートレス化の最終兵器、新チップ「N1」の登場
今回の発表における最大の「伏線」は、間違いなく新開発のワイヤレスネットワークチップ「N1」の搭載です。Appleは公式に、このN1チップによってWi-Fi 7、Bluetooth 6、そしてスマートホーム規格のThreadが利用可能になると説明しています。
これは単なるスペックアップではありません。Appleが長年見据えてきた「ポートレスiPhone」、つまり物理的な端子を一切持たない完全ワイヤレス化への最終準備が整ったことを意味します。
機能 | 従来のチップ | N1チップ |
---|---|---|
Wi-Fi規格 | Wi-Fi 6/6E | Wi-Fi 7 |
Bluetooth規格 | Bluetooth 5.x | Bluetooth 6 |
AirDrop/共有 | 従来速度 | パフォーマンス・信頼性向上 |
設計 | 外部ベンダー製 | Apple自社設計 |
ポートレス化がなぜiPhone Foldに必要なのか
物理的なポート(現在はUSB-C)は、デバイスの厚みに下限を設けてしまいます。どれだけ他の部品を薄くしても、ポートの規格で定められた厚みだけは確保しなければなりません。これは、コンマミリ単位で薄さを追求する折りたたみデバイスにとって、致命的な制約となります。
しかし、ポートをなくすには大きな課題がありました。それは「有線に匹敵する高速で安定したデータ転送」です。大容量の動画ファイルなどをPCに転送する際、現状のワイヤレス技術では時間がかかりすぎる、というユーザーは少なくありません。
N1チップは、この課題を解決するためのAppleの答えです。Wi-Fi 7は、Wi-Fi 6Eに比べて理論上の最大通信速度が数倍に向上し、遅延も大幅に減少します。これにより、大容量データの転送はもちろん、高品質なストリーミングや、将来のAR/VRデバイスとの連携も、よりスムーズになります。
AppleはN1チップによって、「もはや有線ポートは必要ない」とユーザーに納得させられるだけのワイヤレス体験を提供しようとしているのです。そして、その技術が完成した暁には、ポートという物理的な制約から解放された、信じられないほど薄いiPhone Foldの実現が可能になります。
5. 競合の先を行くAppleの「完璧」な折りたたみ体験への布石
SamsungのGalaxy Zシリーズを筆頭に、市場にはすでに多くの折りたたみスマートフォンが存在します。しかし、それらの製品には共通の課題も残されています。
- 厚みと重さ: 折りたたんだ際の厚みは、依然として通常のスマートフォンよりかなり分厚い。
- ディスプレイの折り目: 中央の折り目が気になるという声は根強い。
- 耐久性: ヒンジ(蝶番)部分の耐久性や、ディスプレイの傷つきやすさ。
Appleは後発として、これらの課題をすべてクリアした「完璧」なユーザー体験を目指しているはずです。そのために、時間をかけて技術を一つずつ成熟させています。iPhone Airは、その壮大な計画の一部なのです。
- 薄さの追求 → iPhone Air
- ワイヤレス体験の完成 → N1チップ
- バッテリー問題の解決 → Apple Silicon
これらの要素技術をiPhone Airという「通常形状」のデバイスで先に市場に投入し、大量生産のノウハウを蓄積し、ユーザーからのフィードバックを得る。そして、ヒンジやフレキシブルディスプレイといった最後のピースが揃った時に、満を持してiPhone Foldを発表する。Appleがいかにも好みそうな、周到で戦略的なアプローチだと言えるでしょう。
iPhone Fold登場で変わる私たちのスマホ体験
iPhone AirがiPhone Foldへの伏線であると仮定した上で、では、実際に折りたたみiPhoneが登場すると、私たちの生活やスマートフォンの使い方はどのように変わるのでしょうか。現在出回っている情報や、技術的な可能性から、その未来像を具体的に描いてみます。

引用 : Apple HP
予想されるスペックとデザイン
iPhone Foldは、Appleらしい洗練されたデザインと、妥協のないスペックで登場することが期待されます。
- ディスプレイ: 外側には通常のiPhoneとして使えるカバーディスプレイ、内側には開くとiPad miniに匹敵する7〜8インチのメインディスプレイを搭載する可能性が濃厚です。ディスプレイの折り目は、特殊なヒンジ構造や超薄型ガラス(UTG)の採用により、競合製品よりも目立たないものになるでしょう。
- ヒンジ: Appleは過去に多数のヒンジ関連特許を取得しており、非常に滑らかで耐久性が高く、かつ閉じた時に隙間ができない精密なヒンジを開発していると噂されています。
- Apple Pencil対応: 開いた状態の大画面は、Apple Pencilでのメモ書きやスケッチに最適です。iPadのように、クリエイティブな作業やビジネスシーンでの活用が期待されます。
- カメラ: Proモデルに匹敵する高性能なカメラシステムを搭載しつつ、折りたたみの形状を活かした新しい撮影スタイル(デバイスを半開きにして三脚のように使うなど)が提案されるかもしれません。
価格は一体いくらになるのか?
最も気になるのが価格です。情報ソースでは「30万円超え」との予測もありましたが、これは決して大げさな数字ではないでしょう。
モデル | 予想価格帯(日本円) | 根拠 |
---|---|---|
iPhone Fold | 35万円〜45万円 | ・最新のフレキシブルOLEDディスプレイ ・特殊な精密ヒンジ機構 ・2画面分の部品コスト ・最上位のAシリーズチップ、N1チップ搭載 ・研究開発費の上乗せ |
iPhone Pro Max | 20万円〜25万円 | 現行モデルからの順当な価格上昇 |
競合であるSamsungのGalaxy Z Foldシリーズが、すでに25万円前後で販売されていることを考えると、Appleが後発として投入する、より完成度の高いモデルには、相応の価格設定がされるはずです。おそらく、既存のiPhoneラインナップとは別に、「ウルトラハイエンド」という新たなカテゴリに位置づけられることになるでしょう。
折りたたみiPhoneが活躍する具体的なシーン
iPhone Foldは、私たちの日常の様々なシーンをより豊かで便利なものに変えてくれる可能性を秘めています。
ビジネスシーン
- マルチタスキング: 外出先でメールを見ながら、もう半分の画面で資料を確認・編集したり、ビデオ会議に参加しながらメモを取ったりといった、PCライクな作業が手のひらの上で可能になります。
- プレゼンテーション: クライアントとの打ち合わせで、デバイスをテントのように立てて、画面を共有しながらスマートなプレゼンができます。
エンターテイメント
- 没入感のある動画・ゲーム体験: 開いた大画面は、映画やドラマを迫力満点で楽しむのに最適です。また、ゲームにおいても表示される情報量が増え、よりリッチな体験が可能になります。
- 電子書籍: まるで文庫本を読むかのように、見開きの状態で読書を楽しめます。
クリエイティブ
- 写真・動画編集: 撮影した高画質な写真や動画を、その場で大画面で確認・編集できます。Apple Pencilが使えれば、より直感的で精密な作業が可能になるでしょう。
発売はいつ?製品サイクルから読み解く未来
情報ソースでは「2年後」という予測が立てられていました。これは非常に現実的なタイムラインだと考えられます。
- 2025年: iPhone Air登場。薄型化、N1チップなどの要素技術を市場に投入し、技術の成熟と量産体制を確立。
- 2026年: iPhone Airの販売を継続しつつ、市場の反応と収集したデータを分析。折りたたみディスプレイとヒンジ技術の最終調整。
- 2027年: すべての準備が整い、満を持して初代「iPhone Fold」を発表。
Appleは新しいカテゴリの製品を投入する際、決して急ぎません。Apple Watchの時もそうであったように、技術が完全に成熟し、ユーザー体験に責任が持てると判断したタイミングで市場に参入します。iPhone Airの登場は、そのカウントダウンが始まった合図なのかもしれません。
iOSも折りたたみに最適化される?
ハードウェアだけでなく、ソフトウェアの進化も重要です。iPhone Foldの体験を最大化するために、iOSにも大幅なアップデートが加えられるでしょう。
- iPadOSライクな機能: Stage ManagerやSplit Viewのような、より高度なマルチタスキング機能がiPhoneに導入される可能性があります。
- フレックスモード: デバイスをL字型に折り曲げた状態で、上下の画面に異なるUIを表示する機能(例えば、上画面で動画を再生し、下画面でコメント欄や操作パネルを表示する)が実装されるかもしれません。
- アプリの最適化: Appleはサードパーティのデベロッパーに対し、折りたたみディスプレイに最適化されたアプリの開発を強力に推進するはずです。
まとめ
今回のレビューでは、新たに登場した「iPhone Air」が、単なる薄型の新モデルではなく、未来の折りたたみ式デバイス「iPhone Fold」への壮大な伏線であると考えられる理由を、多角的に考察してきました。
- 異質な「Air」というネーミングは、既存ラインナップとは異なる特別な役割を示唆しています。
- 極薄設計とMagSafeの両立は、将来の折りたたみデバイスの筐体設計に向けた技術実証です。
- Apple Siliconの進化による省電力化は、薄型デバイスのバッテリー問題を解決する鍵となります。
- そして何より、新チップ「N1」の登場は、物理ポートを廃した完全ワイヤレス化を現実のものとし、デバイスデザインの自由度を飛躍的に高めるための最終兵器です。
iPhone Airは、これらの未来技術を巧みにパッケージングし、市場の反応を伺うための戦略的な製品と言えるでしょう。私たちは、知らず知らずのうちに、Appleが描く壮大な未来予想図の、まさに序章を目撃しているのかもしれません。
これから2〜3年、Appleがどのように布石を回収し、私たちを驚かせる「One more thing…」を用意してくるのか。一人のガジェット好きとして、その動向から目が離せません。