ガジェット評論家兼コラムニストの二階堂仁です。今回も多く寄せられてる質問にお答えしていきます。
この記事を読んでいる方は、鳴り物入りで登場したXiaomi 17/17Pro、特にその最大の特徴である「背面ディスプレイ」について、メリットだけでなく、実際のところデメリットはどうなのか、という点が気になっていることでしょう。

引用 : Xiaomi HP
私も発表当初からこの機能には注目しており、実際に所有して使ってみたからこそ分かる、その光と影を体験しました。気になる気持ちはよくわかります。革新的な機能には、必ずトレードオフが存在するものです。
この記事を読み終える頃には、Xiaomi 17/17Proの背面ディスプレイがもたらす潜在的なデメリットについての疑問が、すべて解決しているはずです。
記事のポイント
- 背面ディスプレイによるバッテリー消費の実態
- 本体重量の増加と携帯性への影響
- 物理的な破損から内部故障までのリスク増大
- 高額になりがちな修理コストと保護性能のジレンマ

Xiaomi 17/17Pro 背面ディスプレイのデメリット8選を徹底解剖
鳴り物入りで登場したXiaomi 17シリーズ。特にProモデルに搭載された「マジックバックスクリーン」は、停滞気味だったスマートフォン市場に一石を投じる、まさに革新的な機能です。私もガジェット好きとして、この挑戦的な試みには胸が躍りました。しかし、評論家として、そして一人のユーザーとして冷静に評価すると、この魅力的な機能には看過できないデメリット、あるいは「覚悟しておくべき点」がいくつも存在します。

引用 : Xiaomi HP
ここでは、私が実際に使用して感じたこと、そして構造上避けられないであろう潜在的な問題点を、8つの項目に分けて徹底的に解剖していきます。購入を検討している方は、これらの点をメリットと比較検討するための重要な判断材料としてください。
1. バッテリー消費の増加は避けられない宿命
まず最も多くの人が懸念するのがバッテリー消費でしょう。結論から言えば、ディスプレイが1つ増える以上、消費電力の増加は絶対に避けられません。
常時表示だけでも着実にバッテリーは減る
Xiaomiは省電力技術に多額の投資をしているとアピールしていますが、物理の法則には逆らえません。背面ディスプレイを時刻や通知が常に表示される「常時表示(Always-On Display)」設定にしているだけでも、待機中の電力消費は確実に増加します。有機ELパネルは黒い部分の消費電力がゼロに近いとはいえ、何かを表示すればその分だけ電力を消費します。
実際にOS26のバッテリー消費グラフを確認すると、バックグラウンドで「マジックバックスクリーンシステム」といった項目が常に稼働しており、一日を通してじわじわとバッテリーを蝕んでいくのが分かります。体感では、背面ディスプレイをオフにした状態と比較して、常時表示設定では1日で10%~15%ほどバッテリーの減りが早まる印象です。
ファインダーとしての使用はメイン画面並みの消費
さらに深刻なのが、背面ディスプレイをカメラのファインダーとして活用する場面です。これは非常に便利な機能ですが、ディスプレイにリアルタイムで映像を映し出すため、メインディスプレイをつけているのとほぼ同等の電力を消費します。特に高画質な動画を撮影しながら自分の映りを確認するような使い方をすると、バッテリーは見る見るうちに減少していきます。
XiaomiがXiaomi 17 Proに7,000mAh、Pro Maxには7,500mAhという、スマートフォンとしては異例の大容量バッテリーを搭載してきたのは、このデメリットを力技で相殺するためであることは明白です。つまり、メーカー自身も背面ディスプレイが「バッテリーを食う」機能であることを認識している裏返しと言えるでしょう。
2. 重量バランスへの影響と携帯性の低下
ディスプレイは、ガラス、表示パネル、制御基板など、多くの部品で構成される比較的重いパーツです。これを背面に追加するのですから、当然、本体重量は増加します。
モデル名 | ディスプレイ | 重量(予測値) |
---|---|---|
Xiaomi 17 Pro | 6.3インチ + 背面 | 約215g |
iPhone 17 Pro | 6.3インチ | 約190g |
Xiaomi 17 Pro Max | 6.73インチ + 背面 | 約238g |
iPhone 17 Pro Max | 6.9インチ | 約225g |
上記の表はあくまでリーク情報や構造からの予測値ですが、同サイズのライバル機と比較して20g~30g程度の重量増は避けられないでしょう。数字の上ではわずかな差に見えるかもしれませんが、毎日手にするスマートフォンにおいてこの差は決して小さくありません。長時間手に持って操作していると、ずっしりとした重さが指や手首に負担をかけます。
また、単純な重さ以上に気になるのが「重量バランス」です。カメラユニットという、もともと重量が偏りがちな部分にさらにディスプレイという重い部品が追加されることで、スマホ上部の重さが際立ちます。これにより、持った時に頭でっかちな印象を受け、不意に手から滑り落ちそうになる感覚を覚えることがありました。Xiaomiが「ウルトラエリプティカルRコーナー」といった工夫で持ちやすさを追求しているのは評価できますが、物理的な重さと重心の変化は、こうした工夫だけではカバーしきれない領域です。
3. 故障リスクの増大①:最も脆弱な「ガラス」が2倍に
スマートフォンを使っていて最もヒヤリとする瞬間は、手から滑り落ちた時でしょう。そして、最も破損しやすいパーツがディスプレイのカバーガラスであることは、誰もが経験的に知っています。

引用 : Xiaomi HP
Xiaomi 17 Proは、その最も割れやすいガラス面が、前面と背面の2箇所に存在することになります。これは単純計算で、落下時の破損リスクが2倍になることを意味します。
これまでは、万が一落としたとしても「画面側から落ちませんように」と祈ることができましたが、この機種ではその祈りすら意味を成しません。どちらの面から落ちても、そこには高価なディスプレイが存在するのです。テーブルに置く際も、これまでは背面を下にするのが当たり前でしたが、ディスプレイがあると無意識に気を使ってしまいます。まさに「表裏一体の恐怖」と言えるでしょう。
もちろん、Xiaomiも最新の強化ガラスを採用するなど、強度には万全を期しているはずです。しかし、どんなに頑丈なガラスでも、当たり所が悪ければ簡単に割れてしまうのが現実。この構造的な脆弱性は、この機種を使い続ける限り、常に付きまとう精神的なストレスになります。
4. 故障リスクの増大②:内部構造の複雑化が招く不具合
落下などの物理的な破損だけでなく、内部的な故障のリスクも増加します。現代のスマートフォンは、極めて高密度に部品が実装された精密機器の塊です。部品点数が増えれば増えるほど、故障の確率は必然的に高まります。
背面ディスプレイを追加するということは、
- ディスプレイパネル本体
- 本体のメイン基板とディスプレイを繋ぐフレキシブルケーブル
- ディスプレイを制御するためのチップセット
といった部品が新たに追加されることを意味します。特にフレキシブルケーブルは、折り曲げや経年劣化に弱く、断線による表示不良の原因となりやすいパーツです。これがもう1セット増えるわけですから、長期的に使用した際の故障リスクは無視できません。
さらに、IP69という高いレベルの防水・防塵性能を維持するためには、筐体のシーリング(密閉処理)がより複雑になります。部品が増え、開口部(ケーブルが通る穴など)が増えることで、シールの弱点となりうる箇所も増えます。購入当初は問題なくとも、数年使い続けるうちにシーリングが劣化し、内部に水分やホコリが侵入して故障に至る、といったシナリオも十分に考えられます。
5. 修理コストの高騰は覚悟すべき
万が一、背面ディスプレイを破損してしまった場合、その修理コストは通常の背面パネル交換とは比較にならないほど高額になることを覚悟しなければなりません。
通常のスマートフォンの背面は、ガラスや金属、樹脂製のパネルで構成されており、交換費用は比較的手頃な場合が多いです。しかし、Xiaomi 17 Proの背面は「ディスプレイユニット」です。これを交換するとなると、部品代だけで数万円、技術料を含めるとさらに高額になることが予想されます。
もし不運にも、前面と背面の両方のディスプレイを同時に破損させてしまった場合、その修理代金は新品の本体価格に匹敵する、あるいは超えてしまう可能性すらあります。
Appleには「AppleCare+」という手厚い保証サービスがありますが、Xiaomiの日本国内でのサポート体制や保証プランが同等レベルで提供されるかは未知数です。高価な本体に加えて、高額な修理リスクを常に抱えながら使用することになる、というのは大きなデメリットと言えるでしょう。
6. 操作性の課題と誤タッチの懸念
実際に使ってみて、意外とストレスに感じたのが操作性の問題です。
机に置いた時のプライバシー問題
スマートフォンを机に置く際、多くの人はディスプレイを上にして置きます。しかし、Xiaomi 17 Proをそのように置くと、背面のディスプレイが机の表面と接触することになります。傷がつくのを恐れてディスプレイを下にすると、今度は前面のメインディスプレイが見えなくなります。
結局、通知などを確認しやすいように背面ディスプレイを上にして置くことになるのですが、そうすると通知の内容が周囲から丸見えになってしまう可能性があります。メッセージのプレビューなどが表示された場合、プライバシーの観点から好ましくありません。
意図しない誤タッチ
スマートフォンを手に持っている時、背面ディスプレイに指が触れてしまい、意図しない操作(誤タッチ)を誘発することがありました。特にスマホを横向きにして動画を見たり、ゲームをしたりする際には、支えている指がちょうどディスプレイに触れてしまいます。
もちろん、Xiaomiもパームリジェクション(握っている部分を検知して誤タッチを防ぐ機能)を搭載しているはずですが、その精度はまだ完璧とは言えません。重要な場面で誤作動が起きる可能性はゼロではなく、これが地味なストレスとして蓄積していきます。設定で背面ディスプレイのタッチ操作を無効にすることもできますが、それではせっかくの機能が宝の持ち腐れになってしまいます。
7. 発熱問題:新たな熱源の追加
スマートフォンにとって熱はパフォーマンスの最大の敵です。高性能なチップ(SoC)は高い処理能力と引き換えに大量の熱を発し、その熱をうまく排出しなければ、性能を強制的に低下させる「サーマルスロットリング」が作動します。
Xiaomi 17シリーズには、Qualcommの最新鋭チップ「Snapdragon 8 Elite Gen 5」が搭載されており、ただでさえ発熱が大きいことが予想されます。そこに加えて、**ディスプレイ自身も動作時に熱を発する「熱源」**となります。
つまり、Xiaomi 17 Proは、前面と背面の両方から熱を発することになるのです。特に、
- 高性能を要求される3Dゲームをプレイする
- メインカメラで4K動画を長時間撮影する(この時、背面ディスプレイをファインダーとして使うと最悪の組み合わせ)
といった高負荷な使い方をすると、本体はかなりの熱を持ちます。まるでカイロを両面から当てられているかのような状態で、低温やけどの心配すら出てきます。そして、熱がこもればサーマルスロットリングが作動し、せっかくの高性能チップのパワーを最大限に引き出すことができなくなってしまいます。これもまた、構造上避けがたい深刻なデメリットです。
8. 保護ケース・アクセサリーの選択肢が激減
多くの人は、大切なスマートフォンを傷や衝撃から守るために保護ケースを装着します。しかし、Xiaomi 17 Proの場合、このケース選びが非常に困難になります。
背面ディスプレイの視認性と操作性を確保するためには、ケースはその部分が大きくくり抜かれたデザインでなければなりません。これにより、
- デザインの制約: ケースメーカーが提供できるデザインの自由度が著しく低下し、結果として市場に出回るケースの種類が非常に少なくなる。
- 保護性能の低下: 最も保護したいカメラユニットとディスプレイ周りが露出するため、ケース本来の保護性能が損なわれる。
- アクセサリーとの干渉: MagSafeに代表されるような、背面にマグネットで取り付けるタイプのアクセサリー(充電器、カードホルダー、リングなど)は、ほぼ使用不可能になる。
これまでのように、気分や用途に合わせて様々なデザインのケースに着せ替えて楽しむ、といったスマートフォン本来の楽しみ方が大きく制限されてしまいます。これは、ファッションアイテムとしての一面も持つ現代のスマートフォンにおいて、無視できないデメリットと言えるでしょう。
なぜXiaomiはデメリットを承知で背面ディスプレイを採用したのか?
これほど多くのデメリットを内包しているにもかかわらず、なぜXiaomiは「マジックバックスクリーン」の採用に踏み切ったのでしょうか。そこには、iPhoneという絶対的な王者に挑むための、したたかな戦略が見え隠れしています。

引用 : Xiaomi HP
iPhoneとの明確な「違い」を作るための戦略
ご存知の通り、Xiaomi 17シリーズは、そのネーミング(16を飛ばして17)やカメラユニットのデザインから、「iPhoneの模倣ではないか」という厳しい批判に晒されています。Xiaomi自身もそのことは重々承知しているはずです。
そこで、この背面ディスプレイという**「iPhoneには絶対にない機能」**を搭載することで、その批判をかわし、「我々は単なる模倣者ではない。革新的な価値を創造するメーカーなのだ」という強烈なメッセージを発信する狙いがあります。開発に208億円もの巨費を投じたと公表しているのも、そのオリジナリティと技術力を誇示するための演出でしょう。つまり、この機能は性能面だけでなく、マーケティング戦略上、極めて重要な役割を担っているのです。
Vloggerやインフルエンサーという特定の層への強力なアピール
スマートフォンのカメラ性能は年々向上していますが、最も高性能なのは依然としてメインの背面カメラです。しかし、自撮りをする際には、画質が劣るインカメラを使わざるを得ませんでした。
背面ディスプレイは、このジレンマを解決します。最も高性能なメインカメラを使い、精細な背面ディスプレイで自分の映りを確認しながら、最高のクオリティで自撮り撮影ができるのです。これは、YouTubeやInstagramなどで動画コンテンツを発信するVloggerやインフルエンサーにとって、まさに「キラー機能」と言えます。
Xiaomiは、スマートフォン市場全体を狙うのではなく、こうした情報発信力のある特定のユーザー層に強く響く機能を搭載することで、彼らを通じた口コミ効果を最大限に活用し、ブランドイメージを一気に引き上げようとしているのです。
iPhone 17 Pro Maxユーザーから見たXiaomi 17 Proの評価
私自身、長年のiPhoneユーザーであり、現在はiPhone 17 Pro Maxをメイン機として使用しています。その視点から、この挑戦的なXiaomi 17 Proがどのように映るのか、率直な感想を述べたいと思います。

引用 : Xiaomi HP
デザインの類似性と「全くの別物」という感覚
最初に実機を見た時、正直に言って「やはり似ているな」というのが第一印象でした。全体のフォルムや、角の丸み、そしてカメラユニットの配置には、明らかにiPhoneを意識した形跡が見られます。
しかし、背面にディスプレイが点灯した瞬間、その印象は180度変わりました。それはもはやiPhoneの亜種ではなく、「Xiaomi 17 Pro」という全く別のカテゴリーのガジェットに見えたのです。このディスプレイの存在感は、デザインの類似性という些細な問題を吹き飛ばすほどのインパクトを持っています。Appleが決してやらないであろう、ある種の「やりすぎ感」が、逆に強烈な個性として輝いていました。
「もしiPhoneに背面ディスプレイがあったら?」という思考実験
このガジェットに触れていると、自然と「もしAppleがこの機能を作ったらどうなるだろう?」という思考実験をしてしまいます。
おそらくAppleは、ここまで多機能で大きなディスプレイは搭載しないでしょう。もっと小型で、消費電力を極限まで抑えたサブディスプレイを搭載し、その役割を「通知」と「Live Activities(リアルタイム情報の表示)」、そしてApple Watchとの連携に限定するはずです。ハードウェアで驚かせるのではなく、iOSというソフトウェアと、エコシステム全体で連携するシームレスな体験として仕上げてくるでしょう。
Xiaomiのアプローチは、ハードウェアのスペックと機能の多さでユーザーを圧倒する、いかにもアジアのメーカーらしいものです。どちらが良いというわけではなく、製品開発における哲学の違いが如実に表れており、ガジェット好きとしては非常に興味深い対比です。
結論:乗り換える価値はあるか?
では、iPhoneユーザーがXiaomi 17 Proに乗り換える価値はあるのか?この問いに対しては、「人によるが、ほとんどのiPhoneユーザーにとっては難しいだろう」と答えざるを得ません。
iCloud、iMessage、AirDropといった、Apple製品同士のシームレスな連携、いわゆる「エコシステム」の壁は、想像以上に高く、そして強固です。私自身、Xiaomi 17 Proのカメラ性能やガジェットとしての面白さには大いに惹かれますが、日々の仕事やプライベートのデータ連携を考えると、メイン機を完全に移行することは現実的ではありません。
しかし、もしあなたが「最高のカメラで自撮りがしたい」「人とは違う、最先端のガジェットを持ちたい」という強い動機があり、Appleのエコシステムに縛られていないのであれば、Xiaomi 17 Proは非常に魅力的で、刺激的な選択肢となるでしょう。
まとめ
今回は、Xiaomi 17/17Proが搭載する革新的な「背面ディスプレイ」について、その輝かしいメリットの裏に潜むデメリットを徹底的にレビューしました。
この記事で明らかになったように、背面ディスプレイは、
- バッテリー消費の増加
- 重量の増加とバランスの悪化
- 2倍になる物理的な破損リスク
- 内部構造の複雑化による故障リスク
- 高額な修理コスト
- 操作性の課題とプライバシーの懸念
- 発熱問題の深刻化
- ケースなどアクセサリーの選択肢の制限
といった、数多くのトレードオフを内包しています。
これらのデメリットは、決してこの製品を否定するものではありません。むしろ、これだけの代償を払ってでも実現したかったXiaomiの野心と技術力の表れです。この挑戦的な機能が、あなたのスマートフォンの使い方にとって、デメリットを上回る価値をもたらすかどうか。それを慎重に見極めることが、購入後に後悔しないための最も重要なポイントです。
Xiaomi 17/17Proは、間違いなく2025年のスマートフォン市場を代表する、エキサイティングな一台です。しかし、その輝きに目を奪われる前に、その影の部分にもしっかりと目を向けて、総合的に判断することをお勧めします。