編集デスク ガジェット担当の新海ミナです。 今回も多く寄せられてる質問にお答えしていきます。
この記事を読んでいる方は、最新のポータブルゲーミングPCである「GPD WIN 5」がどれほどのパフォーマンスを持っているのか、特に動作が重いことで知られる『サイバーパンク2077』がどれくらい快適に動くのかが気になっていると思います。 また、新しく採用された数々の革新的な機構や、実用的なフレームレートの実力がどれほどのものなのか、詳しく知りたいと考えているのではないでしょうか。
この記事を読み終える頃には、GPD WIN 5の秘めたる怪物級のポテンシャルと、ご自身のプレイスタイルに合致しているかどうかの疑問が完全に解決しているはずです。
- 最強モバイルプロセッサーRyzen AI Max+ 395がもたらす異次元の演算性能
- サイバーパンク2077でレイトレーシングを有効にしながら70fps超えを達成する描画力
- 物理キーボード廃止と着脱式バッテリー機構が実現した新しいポータブルスタイル
- デスクトップPCやワークステーションに匹敵するクワッドチャネルメモリと大容量仕様
GPD WIN 5の革新的なスペックと新機能
GPD WIN 5に搭載されたRyzen AI Max+ 395の怪物級スペック
GPD WIN 5の心臓部には、モバイル向けとしては現時点で最高峰のプロセッサーである「AMD Ryzen AI Max+ 395」が惜しみなく搭載されています。
このプロセッサーは、新世代の「Zen 5」アーキテクチャを採用したCPUコアをなんと16基も搭載しています。
マルチスレッド処理においては、デスクトップPC向けのハイエンドCPUに匹敵する実力を持っています。
これまでのポータブルゲーミングPCに搭載されていたプロセッサーとは、完全に一線を画す構成です。
並列処理能力の高さは、まさに「怪物級」という言葉がふさわしい仕上がりになっています。
モバイルの常識を覆す16コア/32スレッド
ポータブルデバイスという限られた筐体サイズの中に、16コア/32スレッドのCPUが組み込まれていること自体が驚異的です。
一般的なハイエンドゲーミングノートPCですら、ここまでのコア数を備えているモデルは限られています。
ゲームプレイ時の物理演算や、オブジェクトの非常に多い複雑なシーンでも、CPUのボトルネックを感じることは一切ありません。
Discordなどのバックグラウンドアプリを同時に起動しながらのゲームプレイはもちろんのこと、配信ソフトを同時に回すといった超高負荷なタスクも、この小さな筐体一台で軽々とこなすことができます。
これまでのモバイルゲーミングの常識を、根底から覆すほどの基本処理能力を有しているのです。
GPD WIN 5のグラフィックスを支えるRadeon 8060Sの描画力
ゲームの快適性を左右するGPU部には、最新の「RDNA 3.5」アーキテクチャをベースにした「Radeon 8060S」が採用されています。
この統合GPUは、コンピューティングユニット(CU)数が40基に達しています。
これはデスクトップ向けの独立したグラフィックスカードである「Radeon RX 7600M XT」などの仕様すら上回る規模となっています。
従来のポータブルゲーミングPCに広く搭載されていたRadeon 780Mなどと比較して、その描画性能は劇的に向上しています。
圧倒的なCU数がもたらす実質的なパフォーマンス
Radeon 8060Sの最大の特徴は、同じ電力制限下であっても、従来のミドルクラスGPUを超える高い処理効率を誇る点にあります。
これまでのグラフィックス統合型CPUでは描画がどうしても追いつかなかった、高解像度でのテクスチャ処理が可能です。
さらに、複雑なシェーダー描画を要求されるAAAタイトルであっても、フレームロップを最小限に抑えながら、安定した画面表示を維持してくれます。
携帯型デバイス向けGPUの枠を完全に超えた、次世代の描画体験がここに実現しているのです。
GPD WIN 5が採用するLPDDR5X-8000クワッドチャネルメモリの恩恵
どれだけ優れたCPUやGPUを搭載していても、データをやり取りするメモリの帯域幅が狭ければ、その性能を十分に発揮することはできません。
特にVRAMをメインメモリと共有するAPUシステムにおいては、メモリの速度がグラフィックス性能のボトルネックに直結します。
GPD WIN 5はこの点において、非常に贅沢な仕様を採用しています。
動作クロック8000MHzを誇る超高速な「LPDDR5X」メモリを、クワッドチャネルで駆動させているのです。
帯域幅256GB/sが実現するボトルネックの解消
デスクトップ向けの最新プロセッサーであっても、標準仕様ではデュアルチャネルメモリの採用に留まっています。
そのような中、本製品はクワッドチャネルを採用することで、メモリ帯域幅を最大256GB/sまで引き上げることに成功しました。
これは一般的なノートPCの数倍に達する速度であり、描画データの転送において圧倒的なアドバンテージとなります。
大容量のテクスチャのロード時間が劇的に短縮されるだけでなく、ゲームプレイ中のフレームレートの最小値が底上げされます。
結果として、カクつきのない、極めて滑らかなプレイフィールが得られるようになるのです。
GPD WIN 5の着脱式バッテリー機構による画期的な軽量化スタイル
高性能なプロセッサーを冷却し、かつ大容量のバッテリーを搭載すると、どうしても本体重量が重くなってしまいます。
これは、すべてのポータブルデバイスが抱える永遠のジレンマでした。
GPD WIN 5はこの難題に対して、「着脱式バッテリー」という、極めてユニークかつ大胆なアプローチで解決を図っています。
プレイスタイルに合わせて重量を最適化するシステム
本体のみの重量はわずか590gと、7インチクラスのポータブルゲーミングPCとしては非常に軽量に抑えられています。
しかし、これに大容量の専用外付けバッテリーを背面に取り付けると、総重量は944gにまで増加します。
ここで大きく役立つのが、付属の専用ケーブルを用いた「セパレート接続」というスタイルです。
バッテリーを本体から物理的に取り外し、ケーブルで接続した状態にすることで、バッテリー本体は机の上やポケットの中に収納しておくことができます。
これにより、手元に持つデバイスの重量は590gという最小限に抑えられます。
長時間のゲームプレイであっても、手首や腕への負担を劇的に軽減することが可能になりました。
プレイスタイルや環境に合わせて、重量と駆動時間を最適化できる素晴らしいシステムです。
GPD WIN 5のディスプレイ進化と120Hz可変リフレッシュレートの滑らかさ
液晶ディスプレイも、ユーザーの要望を反映して大幅に強化されました。
画面サイズは、これまでの6インチから「7インチ」へと大型化されています。
解像度はフルHD(1920×1080)を維持しつつ、リフレッシュレートは48Hzから120Hzまでの可変(VRR)に対応しています。
動きの激しいアクションゲームや、フレームレートが激しく変動する環境において、この仕様変更は強力な武器となります。
ネイティブランドスケープパネルの採用というこだわり
ポータブルゲーミングPCの中には、スマートフォン向けの縦画面パネルを横向きに転用しているものが多く存在します。
しかしこれが原因で、古いゲームや一部のインディーズタイトルが正常にフルスクリーンで起動しない、といった相性トラブルが散見されました。
GPD WIN 5では、ゲーマーの利便性を最優先し、「ネイティブランドスケープ(横型)」のパネルを最初から採用しています。
これにより、相性問題を一切気にすることなく、あらゆるゲームを安心して起動することができます。
さらに、可変リフレッシュレートのおかげで、画面の引き裂き現象であるテアリングが発生しません。
常に一貫してスムーズで、目に優しい視覚体験が保証されているのです。
GPD WIN 5で物理キーボードが廃止された理由と操作性の変化
歴代のGPD WINシリーズ、特に前作のWIN 4までは、スライド式の物理キーボードが最大のアイデンティティとなっていました。
しかし、GPD WIN 5ではこのキーボードを思い切って完全に廃止しました。
純粋なスレート(板状)型のスタイルへと、大きな舵を切ったのです。
ゲームプレイへの特化と軽量化のための英断
物理キーボードを廃止した最大の理由は、筐体の無駄な厚みと重量を徹底的に削ぎ落とすことにあります。
ゲームを遊ぶためのコントローラーとしての使いやすさを、極限まで追求した結果と言えます。
文字入力が必要な場合は、右ジョイスティックの下に配置された専用ボタンを押します。
これにより、画面上に高機能な「オンスクリーンキーボード」を瞬時に呼び出すことができます。
このオンスクリーンキーボードはサイズ変更や配置換えが容易です。
一般的なWindows標準のタッチキーボードよりも、格段にゲーム内での入力がしやすくなっています。
キーボードを排したことで、手のひらにぴったりとフィットする完璧なエルゴノミクスデザインと、持ち運びやすさが見事に両立されました。
GPD WIN 5に採用された静電容量式ジョイスティックの操作感
コントローラーの核心であるジョイスティックにも、目立たないながらも決定的な進化が施されています。
これまでの磁気式(ホールエフェクト)スティックから、新たに「静電容量式ジョイスティック」が採用されました。
デッドゾーンの極限までの排除と緻密なエイム
従来のホールエフェクト式は、摩耗によるドリフトが発生しにくいという大きなメリットがありました。
しかしその反面、誤入力を防ぐために、どうしてもデッドゾーン(スティックを傾けても反応しない遊びの領域)を広めに確保せざるを得ませんでした。
新しい静電容量式スティックは、このデッドゾーンをほぼゼロにまで追い込むことに成功しています。
実際に指先でスティックをわずかに傾け始めたその瞬間から、ゲーム内のキャラクターやカメラワークがリニアに追従します。
特にFPSや、精密なアクションが要求されるゲームにおいて、この追従性の高さは決定的なアドバンテージとなります。
これまで以上に直感的で、ストレスのない完璧なエイムコントロールが可能になっているのです。
ジョイスティックの軸には、摩擦を減らすPTFEコーティングが施されています。
さらに、摩耗を防ぐPOM製のリング、軸のブレを完全に排除する真鍮ハウジングなど、細部までこだわり抜いた設計が光ります。
GPD WIN 5の独自規格ミニSSDスロットと容量増設の利便性
ストレージの拡張性についても、本製品には非常に興味深い機能が用意されています。
本体の底面に配置された、まるでスマートフォンのSIMカードスロットのような、超小型の「ミニSSDスロット」です。
これはストレージメーカーであるBWIN社と共同開発された独自規格のものです。
内部はPCIe 4.0 x1接続に相当する、非常に高速な転送速度を実現しています。
安価かつ高速なストレージ増設という選択肢
一般的なMicroSDカードは、1TB以上の大容量モデルになると市場価格が非常に高価になる傾向があります。
その上、転送速度も100MB/s前後と、最近のAAAゲームをロードするにはどうしても物足りないのが実情でした。
このミニSSDは、同容量のMicroSDカードよりも安価でありながら、実測約1700MB/sという圧倒的な転送速度を誇ります。
ゲームの起動時間やロード時間を一切妨げることなく、安価に大容量のストレージスペースを追加できます。
ゲームライブラリを大量に持ち歩きたい熱心なユーザーにとっては、まさに救世主のような拡張機能と言えるでしょう。
GPD WIN 5のゲーム動作検証とフレームレート測定
GPD WIN 5によるサイバーパンク2077の動作検証と実測フレームレート
ここからは、多くの方が最も気になっているであろう『サイバーパンク2077』を用いた実際の動作検証結果について詳しく解説します。
ナイトシティの重厚なグラフィックスと、高度なオブジェクト密度は、PCのスペックを推し量るベンチマークとして最適です。
GPD WIN 5の持つパワーを最大限に引き出すため、システム全体の熱設計電力(TDP)を最大値の70Wに設定しました。
解像度はフルHD(1920×1080)に設定し、実測検証を行いました。
レイトレーシング有効化でも驚異の70fpsオーバーを達成
驚くべきことに、フルHD解像度において「レイトレーシング:低」を有効に設定しました。
さらに、アップスケーラーであるAMD FSR(FidelityFX Super Resolution)を適切に組み合わせた状態でベンチマークを実行しました。
その結果、なんと72.73 fpsという驚異的な平均数値を叩き出しました。
これまでのポータブルデバイスでは、レイトレーシングをオンにした状態でのゲームプレイは「スライドショー」のような状態になっていました。
実用レベルとは程遠いものだったのが、これまでの常識です。
しかし、GPD WIN 5の卓越したGPU性能と圧倒的なメモリ帯域幅が、その壁を打ち破りました。
光の反射や影の表現がリアルに描画される美しいナイトシティを、ポータブル環境でぬるぬると快適に飛び回ることができるのです。
ウルトラ設定でも余裕のあるゲームプレイが可能
レイトレーシングを切った状態であれば、さらに描画品質を高めることができます。
グラフィックスプリセットを最高の「ウルトラ」に設定し、FSRを有効にしました。
この設定でも、混雑したナイトシティの市街地や激しい戦闘シーンにおいて、フレームレートは常に40fps前後を維持していました。
カクつきを抑える可変リフレッシュレートディスプレイの効果も相まっています。
ゲーム専用の据え置きコンソールを遥かに凌駕するほどの美しいグラフィックス表現が、手のひらの上で完全に動作しているのです。
GPD WIN 5でフォートナイトをプレイした際のフレームレート推移
次に、高いフレームレートと低遅延な操作性が勝利の鍵となるオンラインマルチプレイゲーム『フォートナイト』での検証結果をお伝えします。
ポータブルデバイスでありながら、本製品がどれほど競技用ゲームに適しているかをテストしました。
200fpsを超える滑らかな描画性能
グラフィックス設定を「パフォーマンスモード」にし、解像度をフルHDに設定してプレイしました。
その結果、フレームレートは瞬間的に224 fpsを超える数値を記録しました。
本体の120Hzディスプレイの性能を限界まで使い切ることは、言うまでもありません。
それだけに留まらず、本製品に搭載されたUSB4ポートを利用して、外部の240Hz駆動ゲーミングモニターに接続した環境もテストしました。
この状態であっても、実用的なフレームレートを維持したまま、デスクトップPCと全く同等の環境でプレイを続行することが可能です。
さらに、本体に備わった物理的なトリガースイッチを「クリックモード」に切り替えることができます。
これにより、トリガーボタンの押し込みストロークが劇的に短くなります。
射撃ボタンを入力した瞬間、一瞬の遅延もなくゲーム内に反映される、極限まで無駄を削ぎ落としたプレイスタイルを体験できます。
GPD WIN 5で崩壊:スターレイル等の3Dゲームを動かした際の実力
続いて、人気の高いスペースファンタジーRPG『崩壊:スターレイル』での検証です。
こうしたアニメ調の美麗な3Dグラフィックスを誇るゲームは、画面のきめ細やかさがプレイの没入感を大きく左右します。
レンダリング解像度2倍設定でも60fpsに張り付く快適さ
本製品の圧倒的なグラフィックスパワーを評価するため、フルHDの解像度はそのままに設定しました。
その上で、ゲーム内設定の「レンダリング精度」を通常の「2倍」に引き上げました。
これは、実質的な内部解像度を4K相当にするスーパーサンプリング処理に相当し、極めて負荷の高い設定です。
この過酷な状況においても、フレームレートは一切ブレることはありませんでした。
上限である60 fpsに完全に張り付いた状態を、常時維持していたのです。
画面内のキャラクターの輪郭線からジャギー(ギザギザ)が完全に消失します。
まるで最高画質の設定で動かしているデスクトップPCや、高級なタブレット端末で見ているかのような、美しく透き通った映像が目の前に広がります。
シームレスに反応するコントローラー入力と相まって、戦闘時のド派手なエフェクトが発生しても、一切の処理落ちを感じることはありませんでした。
GPD WIN 5と過去のGPD WIN 4における処理能力の徹底比較
GPD WIN 5が遂げた進化の大きさをより明確にするため、前世代モデルである「GPD WIN 4」との性能比較を実施しました。
プロセッサーの世代交代、メモリ仕様の変更、そして冷却効率の向上がどれほど総合的なスコアに影響を与えているかを数値化して比較してみましょう。
| ベンチマーク項目 | GPD WIN 5 (Ryzen AI Max+ 395 / 70W) | GPD WIN 4 (Ryzen 7 6800U / 28W) |
|---|---|---|
| PCMark 10 (総合) | 約 8,400 | 約 5,900 |
| Cinebench R23 (Single) | 1,994 | 約 1,450 |
| Cinebench R23 (Multi) | 29,700 | 約 10,500 |
| 3DMark Time Spy (Graphics) | 約 11,500 | 約 2,800 |
| FF14 黄金のレガシー (最高品質/FHD) | 11,000 (非常に快適) | 約 3,800 (設定変更推奨) |
マルチスコアは約3倍に到達する驚異的な跳ね上がり
上記の比較表を見ていただければ一目瞭然ですが、CPUのレンダリング性能を示す「Cinebench R23」のマルチコアスコアが凄まじいことになっています。
約10,500から29,700へと、およそ3倍に迫る爆発的な性能向上を果たしているのです。
これは、かつて何十万円もしたデスクトップ向けのモンスターCPU「Ryzen Threadripper 2990WX」に肉薄するスコアです。
ポータブルデバイスの性能向上スピードが、物理的な限界を軽々と突破していることを証明しています。
また、3Dグラフィックス性能を評価する「Time Spy」のスコアにいたっては、約4倍もの大差がついています。
古い世代のポータブルゲーミングPCをお使いの方が買い替えた場合、全く別の次元のデバイスに感じられることは間違いありません。
GPD WIN 5を支える180W ACアダプターと消費電力の課題
これほどの怪物級パフォーマンスを発揮するためには、当然ながら相応の電力が必要になります。
GPD WIN 5に付属している純正のACアダプターは、ポータブルゲーミングPCとしては規格外とも言える「180W」の大出力をサポートしています。
接続プラグ形状は直径5.5mm、内径2.1mmのDCジャック仕様となっています。
パフォーマンス重視の代償としての消費電力
この大出力ACアダプターは、本体をフルパワーで稼働させながら、同時にバッテリーを急速充電するために不可欠なものです。
しかし、バッテリー駆動時における消費電力の早さは、本製品を使用する上での最大の留意事項となります。
システム全体の消費電力が非常に高いため、高負荷なゲームをフルパワー(35W以上のTDP制限)で動作させた場合、内蔵バッテリーだけでは約1時間強で残量が空になってしまいます。
一応、一般的な100W出力のUSB PD充電器を用いた給電および充電にも対応しています。
しかしその場合、本体の性能は多少制限されることになります。
外出先で長時間じっくりゲームを楽しみたい場合は、動作させるゲームの要求スペックに合わせて、TDPを15W〜28W程度に手動で引き下げる設定を行う必要があります。
あるいは、大出力のモバイルバッテリーを常に携帯するなどの、運用上の工夫が求められます。
GPD WIN 5のツインファン冷却システムと高負荷時の静音性・発熱
内部で発生する膨大な熱を処理するため、本製品には極めて分厚いヒートシンクが採用されています。
さらに、2基の大型ファン(ツインファン)を搭載した、非常に強力な冷却システムが組み込まれています。
巧みなエアフロー設計によるホールド感の維持
ベンチマークや高負荷なゲームを長時間連続で走らせている間、CPUの最大温度は一時的に80℃〜89℃近くまで上昇します。
しかし、ファンの排熱機構とエアフローが非常によく考えられて設計されています。
そのため、本体の両サイドに位置するコントローラーのグリップ部分に熱が伝わってくることはほとんどありません。
プレイ中に手が熱くて不快になるようなことはなく、長時間のホールドも極めて快適に維持されます。
また、ファンがフル回転した際の動作音についても、高めの不快な金属音ではありません。
低く抑えられた風切り音がメインであるため、ゲームの音を極端に邪魔することはありません。
ただし、静かな寝室などの環境で、隣に人が眠っているような状況では、音への配慮が必要なレベルには達しています。
GPD WIN 5が持つローカルAI(LLM)実行能力と将来の拡張性
「Ryzen AI Max+ 395」の「AI」という名が示す通り、このプロセッサーには強力なNPU(ニューラルプロセッシングユニット)が搭載されています。
さらに、プロセッサーそのものに膨大な並列処理性能が備わっています。
これは単にゲームのフレームレートを向上させるだけでなく、ローカル環境でAIモデル(LLM:大規模言語モデル)を稼働させるクリエイティブな用途でも、非常に高い適性を持っています。
16GBのVRAM割り当てによるローカルLLMの軽快な動作
検証として、200億パラメータの規模を持つローカルAIモデル「GPT-NeoX 20B」を本機に導入しました。
クワッドチャネルメモリの恩恵を最大限に受ける形で、ローカル実行を試みました。
一般的に、この規模のAIモデルを実用的な速度で動かすには、極めて高価なデスクトップ向けグラフィックスカードが必要となります。
しかし、GPD WIN 5では最大16GBの領域をVRAMとしてシステムから割り当てることが可能です。
この設定のもとでテキスト生成を走らせた結果、なんと毎秒60.38トークンという超高速なレスポンスでテキストの生成が行われました。
外出先でもインターネット回線に依存することなく、安全かつ高速に、自分だけのプライベートAIアシスタントを起動できます。
テキスト作成やブレインストーミングを行えるという点は、今後のデジタルライフにおける強力なアドバンテージとなるでしょう。
GPD WIN 5のチックタック開発モデルによる歴史的変遷
GPD社は、自社の主力ポータブルデバイスの開発において、かつてインテル社が採用していた「チックタック(Tick-Tock)開発モデル」に似たサイクルを取り入れています。
「チック(改良)」の世代で前作の課題を克服・洗練させ、「タック(刷新)」の世代で筐体デザインや基本アーキテクチャを劇的にリニューアルする、というサイクルです。
この開発の歴史を振り返ることで、GPD WIN 5がどれほど大きな転換点にあるのかが、より深く理解できるようになります。
初代GPD WINから始まった手のひらPCの挑戦
すべての始まりは、2016年に登場した初代「GPD WIN」でした。
このモデルには、超省電力プロセッサーである「Intel Atom x7-Z8700/Z8750」が搭載されていました。
クラムシェル(折りたたみ)型の超小型筐体に、ゲームパッドと物理キーボードを詰め込んだその姿は、ガジェット界に大きな衝撃を与えました。
当時は「手のひらサイズでWindowsのゲームが起動する」という事実そのものが、奇跡のように扱われていた時代です。
しかし、Atomプロセッサーの処理能力は非常に貧弱でした。
少しでも重い3Dゲームを動かそうとすると、フレームレートは15fpsを下回り、実用的なゲームプレイには程遠い性能だったのも事実です。
アーキテクチャの大幅刷新を遂げたGPD WIN 2
2018年に登場した「GPD WIN 2」は、開発サイクルにおける最初の「タック(刷新)」に相当するモデルでした。
CPUには、メインストリームのノートPCでも採用実績のある「Core m3-7Y30」が惜しみなく投入されました。
これにより、処理能力は初代から劇的な飛躍を遂げることになります。
それまでスライドショーのようだった3Dゲームが、解像度や画質設定を下げることで、30fps以上の実用的な速度で動作するようになったのです。
筐体設計やキーボードの配置、冷却効率も大幅に改善されました。
GPD WINシリーズが「実用的なポータブルゲーム機」として広く認知されるきっかけとなった、極めて重要な名機です。
細部を磨き上げた2019年改良モデル
翌年の2019年には、名前こそ変わらないものの、内部仕様を洗練させた「GPD WIN 2 改良モデル」が登場しました。
これは、開発サイクルにおける「チック(改良)」に相当します。
プロセッサーが「Core m3-8100Y」へと微増アップデートされたほか、マザーボードの回路設計の見直しが行われました。
さらに、ユーザーからの不満が多かったバイブレーターモーターの挙動変更など、細かい部分の信頼性と完成度を高めるアップデートが施されました。
基本デザインを維持しながら、弱点を徹底的に潰していくという、堅実な進化を見せた世代です。
スライダー機構という新機軸を打ち出したGPD WIN 3
2020年の末に登場した「GPD WIN 3」は、再び大きな「タック(刷新)」の世代となりました。
これまでのクラムシェル型を完全に廃止しました。
ディスプレイを上部にスライドさせると物理キーボードが現れる、「スライダー式」の新しいフォームファクターを採用したのです。
プロセッサーには、標準電圧版である第11世代の「Core i7-1165G7(Tiger Lake)」を搭載しました。
内蔵された「Intel Iris Xe Graphics」の恩恵により、描画性能が跳ね上がりました。
『バトルフィールド』などの最新のAAAタイトルが、ポータブル環境でついに実用的に動作するようになったのです。
キーボードには静電容量式のタッチパネルが採用され、未来的なデザインが大きな話題を呼びました。
信頼性を高めた2021年のマイナーチェンジ
2021年には、GPD WIN 3のマイナーチェンジモデルが登場しました。
これまでのサイクル通り、「チック(改良)」のステップです。
CPUのクロック向上モデルが追加されたほか、初期ロットで指摘されていた内蔵デバイスの相性問題や、ファームウェアの安定性が大幅に向上しました。
フォームファクターの奇抜さに隠れがちだった実用性を、より確固たるものにするための調整が施された世代です。
AMDプロセッサーへの完全移行を果たしたGPD WIN 4
2022年、シリーズは再び大きな「タック(刷新)」を迎え、「GPD WIN 4」が誕生しました。
インテル製プロセッサーとの決別を選び、ゲーム性能において圧倒的に優位な「AMD Ryzen 7 6800U」を採用したのです。
筐体デザインは、かつての携帯ゲーム機「PSP」を彷彿とさせる、丸みを帯びた非常に持ちやすいエルゴノミクス形状へとリニューアルされました。
スライド式のキーボードは、前作のタッチパネル式から、確かな押し心地のある「物理キースイッチ」へと戻されました。
この変更は、ゲームプレイ中の文字入力を好む多くのユーザーから大絶賛を受けることになります。
驚異のアップデートを重ねたロングセラーの系譜
GPD WIN 4は、その完成度の高さから、異例とも言える長期にわたる「チック(改良)」のアップデートを繰り返すことになります。
2023年には、CPUを「Ryzen 7 7840U」へと刷新したマイナーチェンジモデルが登場しました。
さらに2024年には「Ryzen 7 8840U」搭載モデルが投入されます。
それだけに留まらず、同年の後半には、最新の「Ryzen AI 9 HX 370」を搭載した超ハイスペックなマイナーチェンジ版まで現れました。
筐体の金型やデザインを維持したまま、中身のプロセッサーだけを最新世代へと乗せ替え続ける手法です。
これにより、GPD WIN 4はポータブルゲーミングPC市場において、非常に長い期間にわたってトップランナーの地位を維持し続けました。
そして「タック」の極みへ達したGPD WIN 5
そして、長きにわたるWIN 4の改良サイクルを終え、満を持して登場したのが、完全なる「タック(刷新)」モデルである「GPD WIN 5」です。
物理キーボードの完全廃止という、これまでのアイデンティティを捨てる大英断を下しました。
その代わりに、最強プロセッサー「Ryzen AI Max+ 395」の熱量を逃がすための完璧なツインファン冷却システムを採用しました。
さらに、重量問題を物理的に解決する「着脱式バッテリー」という、前代未聞のギミックを搭載しています。
これまでのGPD WINシリーズが積み上げてきた歴史と技術の粋を集めました。
「ポータブルでデスクトップ並みの性能を動かす」という究極の理想を具現化した、まさに新時代のマイルストーンとなるデバイスなのです。
まとめ
GPD WIN 5は、単なる「携帯ゲーム機」という枠組みを完全に超越した、新しい時代の超小型プレミアムワークステーション兼ゲーミングPCです。
Ryzen AI Max+ 395プロセッサーとRadeon 8060S、そして超高速なLPDDR5Xメモリの組み合わせは、あの重量級ゲーム『サイバーパンク2077』においてレイトレーシングを有効にしたままで70fpsを超えるという、これまでの常識では考えられなかったレベルのパフォーマンスを実現しました。
物理キーボードを思い切って廃止し、オンスクリーンキーボードや最新の静電容量式スティック、物理トリガーの切り替え機構を導入したことで、ゲーム専用デバイスとしての完成度は極限にまで高まっています。
重量のネックを解決するための「着脱式バッテリー機構」は、ケーブル接続時に背面スタンドの置き方に少し工夫が必要である点や、バッテリー経由のAC直接給電における細かな取り回しの難しさといった、今後の改善が望まれる部分もあります。
また、最小構成でも22万円以上、最上位モデルでは32万円を超えるという価格設定は、決して気軽に手を出せるものではありません。
しかし、この圧倒的なパワーを、いつでもどこでも自分の手のひらの上で完全に掌握できるという贅沢な体験は、他のどんなデバイスでも代えがたい「唯一無二」の魅力に満ち溢れています。
自宅ではドックを介して外部モニターやキーボードと接続し、メインのデスクトップPCとしてクリエイティブ作業やAI活用に使い倒し、外出時にはバッテリーを取り外して軽快なスタイルで最新のAAAゲームに没頭する。
そのような妥協のないマルチなデジタルライフを求めているすべての人にとって、GPD WIN 5は、支払う価値が十二分にある究極の一台と言えるでしょう。


